ちょっとアセンブリ言語を学ぶ機会があったので「Hello World!」までの入門的な概要をまとめてみる。
自分の場合は、アセンブリ言語で実際に何かプログラムを動かすというよりは、コンピュータの内部構造や動作原理の理解が主目的でした。
ちなみにアセンブリ言語のプログラムをマシン語に直すソフトウェアがアセンブラで、マシン語に治す作業自体をアセンブルというようです。
アセンブリ言語を学ぶ意義
アセンブリ言語を学ぶことにはいくつかの意義があります。
- コンピュータの内部構造の理解: アセンブリ言語は、コンピュータの内部動作を直接制御するための低水準プログラミング言語です。アセンブリ言語を学ぶことで、コンピュータの内部構造や動作原理について深く理解することができます。これは、ソフトウェア開発やコンピュータアーキテクチャにおいて非常に重要な基礎知識です。
- パフォーマンスの最適化: アセンブリ言語は、高度な最適化技術を駆使して効率的なコードを書くことができます。特に、リアルタイムシステムや組み込みシステムなど、パフォーマンスが重要な場合にはアセンブリ言語が有用です。アセンブリ言語を学ぶことで、効率的なコードの書き方やパフォーマンスの最適化手法を理解できます。
- バグのデバッグと逆アセンブリ: アセンブリ言語を学ぶことで、プログラムのバグを追跡する際に役立ちます。特に、逆アセンブリという技術を使用すると、バイナリコードをアセンブリ言語に変換し、そのコードを分析することができます。逆アセンブリは、セキュリティ分析やリバースエンジニアリングにおいて重要な手法です。
- ローレベルプログラミングの理解: アセンブリ言語は、高水準言語(CやJavaなど)と比較して非常に低水準の言語です。そのため、アセンブリ言語を学ぶことで、プログラムの実行の仕組みやメモリ管理などのローレベル(コンピュータの動作側に近い)な概念を理解することができます。これは、ソフトウェア開発において高水準言語だけでは対応できない課題に取り組む際に役立ちます。
以上のような理由から、アセンブリ言語を学ぶことは、コンピュータの内部動作やパフォーマンス最適化、バグのデバッグ、逆アセンブリ、およびローレベルプログラミングの理解など、さまざまな面で重要です。アセンブリ言語は、高水準言語で書かれたコードが最終的にどのように機械語に変換されるのかを理解するための架け橋としても機能します。これらの知識は、ソフトウェア開発やシステムエンジニアリング、セキュリティ分析などの分野で役立ちます。また、アセンブリ言語を学ぶことは、高水準言語でのプログラミングスキルを向上させる上でも有益です。
インストール方法
Linux に NASM をインストールする場合は以下でOK。リンカは最初から入っています。
sudo apt install nasm
Windows で NASM を使う場合はこのサイトが参考になります。
ちなみに Windows では MASM というアセンブラもあります。Visual Studio をインストールすると使えるようになります。
Hello World!
エディタで下記のコードを hello_world.asm として保存します。
section .text
global _start
_start: ;エントリポイント
mov edx,len ;長さ
mov ecx,msg ;メッセージ
mov ebx,1 ;標準出力を指定
mov eax,4 ;writeのシステムコール番号
int 0x80 ;システムコール
mov eax,1 ;exitのシステムコール番号
int 0x80 ;システムコール
section .data
msg db 'Hello, World!',0xa ;出力する文字列
len equ $ - msg ;長さ
ではコンパイルしてみましょう。(Linux で動作確認)
成功すると hello_world.o のオブジェクトファイルが生成されます。
nasm -f elf64 hello_world.asm
リンクについては下記で。
(ld の語源は link loader から来てる説と Directory の D の説あり)
ld -s -o hello_world hello_world.o
これで生成された実行形式のファイルを実行して「Hello, World!」が出力されれば成功です。
構文の説明
_start の部分はエントリポイント(プログラムの実行開始点)を指定しています。
mov は代入するという意味。「int 0x80」は番号に応じてシステムコールを呼び出しています。
詳しくは下記あたりの書籍が定番になるでしょう。
レジスタ名
最初は rax とか ebx とかどういう意味だろうと思うかもしれませんが基本的なレジスタの意味は以下のとおり。
- AX : Accumulator アキュムレータ、演算に使われ結果などを記憶
- BX : Base Register データのベースアドレスを保持
- CX : Counter Register 数のカウントなどに使われる
- DX : Data Register データを記憶する
最初に e (Extended)が付いてたら32bit。r (Register)が付いてたら64bit。
アセンブリ言語の文法
文法はいたってシンプル。
MOV RAX, 4
のようにニーモニック(処理内容に応じて各機械語命令に与えられた命令語。機械語のオペコードに相当する)+オペランド(命令対象となる引数)です。基本はこれだけです。コンピュータも元をたどれば単純な計算の積み上げでしかないということですね。
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